【泰然自若】
【泰然自若】
『泰然自若』という四字熟語があります。
意味は、
『落ち着き払ってびくともせず、物事に動じないこと。
あわてずに悠然と構えていること。』
です。
『雲烟過眼』という四字熟語があります。
意味は、
『雲烟(雲やかすみ)が目の前を通り過ぎるのに心を動かさないように、物事に深く執着しないこと。』
です。
『何があっても動じない』
『何が起きても平然としている』
『日常の些事など歯牙にもかけない』
ことが肝要です。
人生は、
何が起きても『雲烟過眼』で、
『泰然自若』としていられるようになるための修行のようなものです。
これに関して、
『ニュー・アース』(著者 エックハルト・トール 訳者 吉田利子 サンマーク出版)
の中に、こう書いてあります。
「J・クリシュナムルティはインドの偉大な哲学者、霊的指導者で、
五十年以上も世界各地を旅して講演し、
言葉を通じて――言葉とは中身だが――言葉を超え、中身を超えたことを伝えようとした。
人生も後半にさしかかったあるとき、
彼は
『私の秘密を知りたいと思いますか?』
と問いかけて、聴衆を驚かせた。
聞いていた全員がはっと耳をそばだてた。
聴衆の多くは二十年三十年と彼の言葉を聞いてきて、
それでもなお彼の教えの本質を理解することができないでいた。
長い歳月のあと、
ついに師は教えを理解する鍵を与えてくれるのか。
『これが私の秘密です』
と彼は言った。
『私は何が起ころうと気にしない』。
彼はそれ以上説明しなかった。
たぶん聴衆のほとんどはいっそう当惑したのではないか。
だが、
このシンプルな言葉の意味はとても深い。
何が起ころうと気にしない。
これは何を意味するのか?
自分の内面に起こった出来事と調和している、
ということだ。
『何かが起こる』、
それはもちろんそのときどきの状態として現れており、
つねにすでに存在している。
起こった何かとは中身で、
いまという時――時にはこれしかない――の形だ。
その何かと調和しているというのは、
起こった出来事との関係に心のなかで抵抗せずにいるということである。
起こった出来事に善だ悪だのというレッテルを貼らず、
ただあるがままに受け入れる。
あるがままに受け入れるなら、
行動もせず、
人生を変化させようともしないのか?
そうではない。
それどころか逆で、
いまという時との内的な調和をベースに行動するとき、
その行動には『生命』そのものの知性の力が働く。
(中略)
日本のある町に白隠という禅の老師が住んでいた。
彼は人々の尊敬を集めており、
大勢の人が彼の教えを聞きに集まってきていた。
あるとき、
寺の隣の十代の娘が妊娠した。
怒り狂った両親に、
子どもの父親は誰だと問い詰められた娘は、
とうとう白隠禅師だと答えた。
両親は激怒して白隠のもとに怒鳴り込み、
娘は白状したぞ、
お前が父親だそうだな、
となじった。
白隠は
『ほう、そうか?』
と答えただけだった。
噂は町じゅうどころか近隣の地域にまで広がった。
禅師の評判は地に堕ちた。
だが禅師は意に介さなかった。
誰も説法を聞きに来なくなっった。
だが禅師は落ち着き払っていた。
赤ん坊が生まれると、
娘の両親は禅師のもとへ連れてきた。
『お前が父親なんだから、お前が面倒を見るがいい』。
禅師は赤ん坊を慈しみ、世話をした。
一年たち、
慙愧に堪えられなくなった娘が両親に、
実は赤ん坊の父親は近所で働く若者だと白状した。
両親はあわてて白隠禅師のもとへ駆けつけ、
申し訳なかったと詫びた。
『ほんとうにすまないことをしました。赤ん坊を引き取らせてもらいます。
娘が、父親はあなたではないと白状しましたんで』。
『ほう、そうか?』。
禅師はそう言って、
赤ん坊を返した。
禅師は偽りにも真実にも、
悪い知らせにも良い知らせにも、
『ほう、そうか?』
とまったく同じ対応をした。
彼は良くても悪くてもいまという瞬間の形をそのまま認めて、
人間ドラマには加わらなかった。
彼にとってはあるがままのこの瞬間だけがある。
起こる出来事を個人的なものとして捉えない。
彼は誰の被害者でもない。
彼はいまこの瞬間に起こっている出来事と完璧に一体化し、
それゆえに起こった出来事は彼に何の力も振るうことができない。
起こった出来事に抵抗しようとするからその出来事に翻弄されるし、
幸福か不幸かをよそから決められることになる。
赤ん坊は慈しまれ、
世話をされた。
抵抗しないという力のおかげで、
悪い出来事が良い結果になった。
つねにいまという瞬間に求められたことをする禅師は、
時が来たら赤ん坊を手放したのだ。」(216頁〜218頁)
何が起きても『泰然自若』としている。
流れに逆らわず、
流れに身を委ねる。
成り行きに任せる。
何が起ころうと気にしない。
すべては神の御心のままに。
『湯上がりの 気持ちを欲しや常日頃』(曲亭馬琴)
『もの持たぬ たもとは軽し夕涼み』(白隠禅師)
『気に入らぬ 風もあろうに柳かな』(仙厓和尚)
『雲烟過眼 柳に風と受け流す』
(推薦図書)
『ニュー・アース』
(著者 エックハルト・トール 訳者 吉田利子 サンマーク出版)
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